前回「剥がせるが跡は残る」と書いたところ、「それでもやり方を教えてほしい」というご連絡が続いています。この記事では、当社の工場でマーキングを剥がすときにやっていることを、道具から順番まで、そのまま書きます。
先に、結論から
- 当社が工場で剥がすときに使っているのは、「ソルビー」という剥離剤と、それを噴射するガンです。それ以外の特別な機械はありません。
- 手順は5つ。粘着テープで剥がす → ガンで噴射して撃ち抜く → 輪郭をぼかす → ドライヤーで乾かす、の流れです。
- 剥がせるのは、シートを圧着した加工(ラバー転写など)だけです。シルクスクリーンや昇華プリントは、剥がすものがそもそもありません。
- どれだけ丁寧にやっても、跡は残ります。理由は前回の記事に書いたとおりです。
- そのうえで、この記事のやり方で剥がれなかった一着は、当社にお持ちいただいても剥がすことは困難です。詳しくは末尾に書きます。
「跡が残っても構わないから、とにかく取りたい」という方に向けて、以下、手順です。
まず、剥がせる加工かどうかを見分ける
番号やチーム名の入れ方は1つではありません。触って、光にかざして確かめてください。
| 加工 | 見分け方 | 剥がせるか |
|---|---|---|
| ラバー転写(圧着シート) | 少し厚みがあり、ゴムのような手触り。縁に段差がある | ○ この記事の対象 |
| シルクスクリーン | 生地の織り目がインクの上から見える。手触りは生地に近い | ✕ インクが生地に刷り込まれている |
| 昇華プリント | 厚みも段差もまったく無く、生地の色そのものが違う | ✕ 生地が染まっている |
ラバー転写のしくみは加工方法のページに、昇華プリントはこちらに書いてあります。 シルクスクリーンと昇華は、剥がすという発想が使えません。 この2つは、上から別の色を重ねるか、つくり直すかの二択になります。
用意するもの
- 剥離剤「ソルビー201D」(オザワ工業)。クリーニング業で使われているシミ抜き液で、当社はこれをプリント除去に使っています。モノタロウの商品ページ
- 「ソルビーガン OZW-BR(ボトル式)」(オザワ工業)。溶剤専用の電動ガンで、ノズルを絞って直線状に飛ばす「ストレート」と、広げて霧状にする「スプレー」を切り替えられます。当社はこれを推奨します。モノタロウの商品ページ
- 粘着テープ(ガムテープなど)
- 白い当て布(色のついた布は使わないでください。色移りします)
- ドライヤー
どちらも業務用の道具です。金額はリンク先でご確認ください。 除光液やシンナーなど、家庭にある溶剤で代用しないでください。 剥離剤より先に生地の色が落ちます。ガンに水を入れて使うのもやめてください(内部が錆びて使えなくなります)。
手順
おすすめはしていません。 生地の状態は元に戻せません。試合で使う一着、これからも着る一着では試さないでください。 試される場合は、ウェアの状態が変わってしまう可能性を承知のうえでお願いします。 剥離剤は溶剤です。風通しのよい場所で、火気から離して、手袋をして作業してください。
1. 剥がれかけている部分を、粘着テープでできる限り剥がす
浮いている・めくれている部分に粘着テープを貼って、はがす。これを繰り返して、テープで取れる分は先に取ってしまいます。 やり過ぎないこと。 無理に続けると、今度はテープの粘着剤がユニフォームに残ります。テープで取れなくなったところで止めてください。
2. 裏側に白い当て布を入れる
ウェアの中に、剥がす箇所の裏へ当たるように白い当て布を入れます。 噴射した薬剤が裏まで抜けるため、当て布が無いと前身頃に回ります。色のついた布は色移りするので、必ず白を使ってください。
3. ガンを「ストレート」にして、剥がれかけている箇所を撃ち抜く
ノズルを絞り、剥離剤を直線状に噴射します。 狙うのは、まだ残っているシートの縁や、浮きかけている部分。そこを一点ずつ撃ち抜いていくイメージで、シートを生地から浮かせて取っていきます。 一度に全部を取ろうとせず、取れた分だけ進めます。
4. シミの輪郭を「スプレー」でぼかす
シートがあらかた取れると、噴射した部分がシミのような形で残ります。ここで止めると、番号の形のシミが残ります。 ノズルを広げて霧状の「スプレー」に切り替え、シミの輪郭に沿って噴射して、境目をぼやかしていきます。 シミ全体の縁がぼやけて、周りとの境目が分からなくなるまで続けます。
5. ドライヤーで一気に乾かす
シミ全体がぼやけたら、ドライヤーで加熱して急速に乾かします。剥離剤を揮発させるためです。 乾いたら、跡の出方を確かめてください。ここで見えているものが、この一着に残る「跡」です。
うまくいかないときのサイン
途中でこういう状態になったら、そこで止めてください。続けるほど悪くなります。
| こうなったら | 原因として多いもの |
|---|---|
| テープを剥がした跡がべたつく | 手順1のやり過ぎ。粘着剤が生地に移っています |
| 前身頃や裏側に色がにじんだ | 当て布が無い、または白以外の当て布を使った |
| 番号の形のシミがそのまま残る | 手順4のぼかしが足りない。輪郭に沿ってもう一度スプレーする |
| 番号の下だけ生地の色が濃い | 番号の下は日焼けしていないため。剥がし方とは無関係で、戻りません |
前回書いたやってはいけないことも同じです。高温のアイロンを長く当てる、家庭の溶剤で代用する、爪やカッターで削る、洗濯機で強く回す。この4つは生地を確実に傷めます。
剥がしたあと、どうするか
- 跡の上に新しい番号を貼りたい。 前の番号の跡が透けて見えることがあります。そのため当社では、番号の付け替えは承っていません。詳しくは前回の記事をご覧ください。
- 同じ番号を入れ直したい。 剥がれかけた番号を同じ番号で入れ直すのは「修理(ユニリペア)」として承っています。対象は競技用のユニフォームだけで、記念に取っておく一着やコレクション目的のものはお受けしていません。料金の目安は料金のご案内に、直せる一着・直せない一着の見分け方は剥がれた背番号は直せる?にまとめました。
- 新しくつくり直したい。 結果的にいちばんきれいで早い方法です。チーム・クラブのページと料金のご案内をご覧ください。
当社では、「剥がす」作業をお受けしていません
ここに書いた手順は、当社の工場で行っている作業そのものです。 使っている薬剤も道具も、上に書いたとおりで、それ以上のものはありません。 ですから、このやり方で剥がれなかった一着は、当社にお持ちいただいても剥がすことは困難です。 「剥がす作業だけ」のご依頼は、当社ではお受けしていません。
その代わり、足す・直す・つくり直すはお任せください。 番号を足す、剥がれた番号を直す(競技用のみ)、新しくつくる、どれが合っているか迷ったら、 その一着の写真を1枚、下の窓口から送ってください。剥がす前に見せていただけると、いちばん確かな答えを返せます。